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シルクロード自転車の旅 ウズベキスタン編

【ウズベキスタン 教師体験編】 


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中央アジアを旅する上でちょっと面倒なのは、入国にビザが必要な国が
多いことである。ビザ不要なのはキルギスだけだ。
カザフスタンは日本人にはタダで観光ビザを発給してくれるし、日数も
二、三日と比較的短い。ウズベキスタンは一週間待ち。
 厄介なのがトルクメニスタンで、観光ビザはガイドを手配したりして
スゴク費用がかかる。トランジットビザだと有効期間はたったの五日。
ウズベキスタンの首都タシケントでビザを取得する場合は3週間待ちだという。
しかも出国先(俺の場合はイラン)のビザを持っていないといけない。
従って先にイランビザを取得する必要がある。
話はどんどんややこしくなるが、イランビザの場合はまずネット上で
イラン国内の旅行代理店にビザ発給番号取得の手続きを依頼しなくてはならない。
その番号が発行されたら大使館へ行き、ビザの発給手続きをする。
んで一週間以内にはビザがもらえるという按配である。


つまりタシケントでの場合、①ビザ発給番号取得をネット上で依頼→②番号取得、
イラン大使館へGo→③イランビザGet、トルクメニスタン大使館へGo→
④晴れてトルクメビザ取得、となる(他にもアルマアタで申請するパターン、
タジキスタンのドゥシャンベで申請するパターンなどがある)。
ところがウズベキスタンビザの有効期間が一ヶ月で延長が効かないため、
トルクメビザ発行を待っている間に一旦第三国へ出国しなくてはならない。
即ち、上記③の後、④ウズベキスタンを出国、キルギスへ戻り新しい
ウズベクビザを取得→⑤ウズベクに再入国してトルクメビザを回収、となる。
 ちなみにオシュ街道はもう二度と通りたくなかったので、カザフスタンの
シムケントやタラスを通るルートでキルギスへ戻ることにした。
つまりカザフビザもまた取り直さなくてはいけなかった。
しかもマルチビザをくれなかったので、行きと帰り二回分取る羽目になった。
ああややこしい。


 イランのビザ発給番号取得についてネット上で調べると、iranianvisa.comと
いうところが一番最初に出てきたので、深く考えずにそこに依頼。
7~10 working daysで発給とあるので、二週間くらい待ってればいいんだな、と
思い、待つ間を利用して、ウズベキスタンのファルガナ盆地にある
日本語学校へ行ってきた。
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 ファルガナ盆地のリシタンにはノリコ学級という現地の子供たちのための
日本語教室がある。ウズベキスタンの義務教育では半日しか授業がない。
おまけに綿花の収穫の時期は手伝いのため休みだとか、絶対的な勉強時間が
とにかく少ない。
そこで「子供たちに勉強する場を」ということで作られている。
金持ちのための学校ではない。だから運営は完全にボランティアである。
その学校で、俺は日本語と英語を教えていた。
本当は日本語だけだったハズなのだが、実は俺はカナダでTESOLという
英語教師の資格を取っている。で、英語もいつの間にか任されていた。
九月から日本に留学に行く人が五人いて日本語の特別授業をしたりで、
気がついたら朝から晩までめちゃ働いていた。
この2週間は心底充実していたと思う。やっぱ人と関わらなきゃダメよ、うん。
 この学校の問題は、教師が基本的にボランティアということである。
だから教師は長居しないし、そもそもいるかどうかも分からない。
俺が行ったときはJICAの職員さんが2年間だけ常駐していたが、その人が
常駐としては初めてで、後任がいるかどうかも不明。
お金を取らないから、教える側の人材確保が難しいのだ。


 ところで一人、英語が全く初心者の女の子が、これから大学受験があるので
十日間で英語を教えて欲しいとやってきた。
前述のこれから日本に留学に行くウズベク人が教えたほうがいいと思って
いたのだが(だって立命館APUに英語で試験受かってるくらいだから
相当できるはず)、なぜか彼が通訳に入りながら俺が教えることに。
 言語を勉強する場合、初めからターゲット言語のみで勉強するのはあまり
効率が良くない。不可能ではないが、効率が悪い。
単語一つ教えるのにマンガ描いたりパントマイムしたりしないといけないし。
通訳が入ってもいいけど、同じことを二回話すことになるわけだから結局
時間が倍かかる。何せ十日間ということなのでThis is a penから始めて超特急で
過去形と5W1Hの疑問文まで進む。これでもう一週間くらい。


教えながら確認していると、やっぱり初めての外国語の勉強だからなかなか
スムーズに呑み込めていない。通訳の彼は段々イライラしてくる。
こっちはハラハラしてくる。別に彼女の呑み込みが悪いとか言うんじゃなく、
そもそも無理な話だと思う。まだ現在完了とか仮定法とかあるのに。
一旦おさらいのテストをしてみるとbe動詞を理解していないことが判明。
通訳の彼、かなりキツイ調子でもっかい説明。
「まだわからんのか」みたいなことを言ってる。
で彼が出て行った後泣き出す女の子。どうしたらいいか分からない俺。
 勉強は呑み込みのいい人も悪い人もいる。得意分野・苦手分野もある。
しかしやる気のある生徒相手に理解させてあげられないのは教師の責任問題だろう。
…とはいえ、ペースは考えなくてはいけない。
まあ、ここはもう十日で一通りなんて無謀なプランは捨てよう、と思い
もう一度This is a penからやり直すことにした。
 ウズベク語はテュルク語系という大きなグループに属しており、トルコ語、
アゼリー語、カザフ語やキルギス語と似ていて、文法は日本語と基本的に
一緒である。だから「これはペンです」の「…は…です」がisにあたることは
理解できても、何故疑問文だとそれが先頭に来るのか、そのへんが
呑み込めないみたいなんだなー。
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でもそれが何故なのかとか言ってもあんまり意味ない。
これはこういう使い方をするもんなんだと考えてもらわないと。
通訳は彼女と同い年くらいの女の子に替えて(英語は全然下手だけど、
彼女に教えるには逆にいいかもしれない)、単語リストを作ってあげたりして
(教科書はみんな共同で使っているくらいで、彼女が自習できるような
参考書がそもそもない)色々工夫した。
その子から最終日にバラの花をもらって、「教え方がすごく良かった、
あなたが好きです」と言われた(通訳を介して。うーん、ロマンス)。
そう言ってくれるのは本当にうれしいことだけども、十日かかってようやく
be動詞を教えただけで、本当に自分の教え方は良かったのか、
個人的には疑問である。 十日間朝から晩まで付きっきりなら或いは
可能だったかもしれない。しかしそのために他の英語の授業や日本への
留学生の授業を捨てるわけにもいかない。
人生は常にトレードオフである。

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