「英語発音マスター法」を日本一の発音のプロから学ぶ 東後勝明

日本一の発音のプロから学ぶ!

~言葉と気持ちが伝わる機内アナウンス~

早稲田大学 

名誉教授

東後 勝明

NHKラジオ「英語会話」の講師を14年間にわたって務められ、多数の英語学・英語教育の本を執筆された東後勝明先生。英語の発音のスペシャリストをお迎えして、キャビンアテンダントを目指す学生のための発音講座を開きました。講座では、キャビンアテンダントの試験対策のためにアイザックが活用している教材をもとに、機内アナウンスの例文の発音方法を丁寧にご指導いただきました。
https://airline.gr.jp/article/in-flight-announcements

また、講座の最後に東後先生へのインタビューも行い、英語の発音方法のコツをさらにお伺いしたので、ご紹介していきます。

東後先生のスペシャルインタビュー

発音のスペシャリストならではのコツや練習方法を伺いました!

Q

日本人が特に難しい発音は何でしょうか?

A

母音では、日本人の耳に「ア」と聞こえる音が難しいですね。例えば、帽子という意味の“Hat”、小屋という意味の“Hot”、心という意味の“Heart”、猫の“Cat”。日本人の耳には全部同じ「ア」に聞こえるのですが、これは全部違う“a”の音です。

子音では“l”と“r”の発音が難しいです。自分でちゃんと発音ができても、相手が言った言葉の“l”と“r”を聞き分けるのは非常に難しいですね。

自分で“l”と“r”を区別して発音できるようになるのは練習すればできます。でも、相手が言っていることを聞き分ける場合は、普通の単語であれば意味によって“l”か“r”か、推測がつきますが、地名や人名とかになると全く想像がつきません。そうなると耳に頼るしかないですよね。

耳で“l”と“r”を聞き分けられる日本人は相当訓練を受けた人だけでしょう。私にも難しいです。固有名詞を自分の耳で聞いて、常に“l”と“r”を間違えないように聞き取るのは難しいですね。

Q

難しい発音を、現地の人に伝えやすく発音するためのコツ、練習方法はありますか?

A

母音の習得方法

母音の場合は自分の耳を頼りに、「聴覚感覚」で身につけていきます。英語では“Auditory image”というのですが、分かり易く言うと、正しい発音をよく聞いて真似をし、練習すること。そうすると、少しずつ母音の正しい発音を身につけることができます。

子音の習得方法

子音の場合は、「視覚情報」を中心に身につけていきます。例えば、発音をする際、鏡を使って自分の口の中で、舌がどういう位置にあり、どういうふうに息が通過しているかということを見て覚えます。

また、視覚だけではなく、「触覚情報」も頼りになります。口の中に指を入れて歯茎や舌を触りながら、正しい発音をする時の感覚を覚えていきます。

 このように自分で少しずつ練習をしていけば、誰でも必ず普通に通じる程度の発音ができるようになります。

一度に全部の母音と子音を覚えるのは難しいので、一ヵ月にひとつでもいいからマスターするように自分で努力をすることが大切です。英語の母音は12個なので、毎月1つずつ自分なりに練習していくと、1年間で母音がマスターできます。

子音の場合は大体24個なので、それも毎月1つずつ練習していけば、2年でマスターできるようになりますね。

Q

先生がアメリカやイギリスに行かれた時に、一番驚いた、戸惑った現地の人の発音はありますか?

A

イギリスのパブでお昼ごはんを食べに行った時のことでした。そこのパブはたくさんの人が並んでいるので番号札を渡され、自分の注文した食事が出る時に番号札で知らせてくれることになっているお店でした。

注文した後、店員が番号札を渡してくれ、“I’ll give you a shout”と言ったんですね。意味がよく分からなかったので、“Pardon?”と聞き返すと、もう一度“I will give youa  shout”と言ってきたんです。それでもやっぱり分からないので、“Pardon?”と言うと、“I,  will,  give,  your, shout”と今度は一語、一語ゆっくりと言ってくれたんですね。それでも私は分からないので“Idon’t understand”って言ったんです。

 そうしたら隣にいた人が肩を叩いて、「料理ができたら声をかけてくれるから」と説明してくれたんです。声をかけるというのが、“I willgive you a shout”ということで、「食事の番号札を呼ぶから取りに来てください」と言っていたことがやっと分かったんです。どうやらパブではどこに行ってもその言葉を使うようで、日本語で言えば「お声かけしますから」という意味だったんです。これが一番戸惑った言葉ですね。あの時は、「本当にお昼ごはん食べられるんだろうか」って番号札握りしめながらドキドキしていましたね。

Q

東後先生独自の発音マスター法はありますか?

A

小学校の高学年ぐらいか中学生の頃、セルロイドの筆箱を買ってもらった時に、蓋を開けて耳の所に持って行くと自分の声がこもって、響くように聞こえることに気付いたんです。その時に大発見をしたような喜びを感じて、それから自分の声を聞いて色んなことを言ってみたり、歌を歌ってみたり、英語の単語を言ってみたりしました。自分の声を自分の耳で聞き取ることができることから得られる、素晴らしさに気付いたんです。

筆箱じゃなくても、耳と口を手で覆って話すと自分の声がスピーカーを通したように聞こえるのですが、これと同じですね。これに魅せられて一生懸命、歌を歌ったり、英単語を言ったりして音声の響きみたいなものに惹かれていったんです。

そういうところから音声の英語の勉強というところに少しずつ開眼していったんじゃないかなと思います。口と耳で常に自分で確認をしながら練習をしたり、楽しんだりしてきたのですが、口に叩き込まれたという感覚でもあります。こうやって自分の声を聞きながら正しい発音を身につけていく練習をすることが私のマスター方法でしたね。

Q

発音を上達するために大切なことは何でしょうか?

A

発音をよくするためには、この部分をこうやって直したらいいというだけではないように思います。本人の言葉に対する姿勢、取り組み方、日常生活の言葉に関係することが総合的に英語の発音の中に出ています。

人間性すべてが言葉に表れるので、ただたんにこの音をこういうふうに発音しなさいという技術的なことだけではなく、言葉に対する意識を見直してくことも大切なのではいでしょうか。その上で、発音の身につけ方、練習の仕方を早い段階で身につけおけたらベストですね。

今が進歩への第一歩なので、投げ出さずに練習していけばきっと花は咲きます。発音上達を目指して、諦めずに頑張ってください。

最後に

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