日本一の発音のプロから学ぶ!~言葉と気持ちが伝わる機内アナウンス英語~
早稲田大学 名誉教授 東後 勝明氏
NHKラジオ「英語会話」の講師を14年間にわたって務められ、多数の英語学・英語教育の本を執筆された東後勝明先生。英語の発音のスペシャリストをお迎えして、キャビンアテンダントを目指す学生のための発音講座を開きました。講座では、キャビンアテンダントの試験対策のためにアイザックが活用している教材をもとに、機内アナウンスの例文の発音方法を丁寧にご指導いただきました。
また、講座の最後に東後先生へのインタビューも行い、英語の発音方法のコツをさらにお伺いしたので、ご紹介していきます。
東後先生の特別講座
機内アナウンスの英語の発音を徹底指導!
外資系航空会社の試験では、日本語アナウンスに加え、受験者の基本的な英語力をチェックするために、英語アナウンスが行われる場合もあります。その際に求められるレベルより更に上のプロレベルの発音方法をご教授いただきましたので、ご紹介します。
離陸前の機内アナウンス
<日本語>
皆さま、今日も日本航空770便、ロンドン行をご利用くださいましてありがとうございます。
この便の機長はジョン・ブラウン、私は客室を担当いたします山田花子でございます。
まもなく出発いたします。
シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締めください。
ヒースロー空港までの飛行時間は13時間20分を予定しております。
ご利用の際は、お気軽に乗務員に声をおかけください。
それでは、ごゆっくりおくつろぎください。
<英語>
Good morning, ladies and gentlemen.
Welcome aboard Japan Airlines flight 770 to London.
Your pilot today is Captain John Brown and my name is Hanako Yamada, your senior cabin attendant on this flight.
We are now ready for departure.
Please make sure that your seat belt is securely fastened.
Our flight time to Heathrow Airport is expected to be 13hour(s)and 20 minutes.
Your cabin attendants are looking forward to serving you.
We hope you will enjoy your flight with us.
Thank you.
発音アドバイス
“Good morning, ladies and gentlemen.“
‐“Good morning”は、“morning”の方が重要なので、“Good”は弱く発音する。普段日常生活で挨拶をする際は、“Good”があまり聞こえず、“morning”しか聞こえないことがよくあります。なので、“Good”は自分の頭の中だけで言うようにして、“morning”を強調して発音しましょう。
‐“Ladies” から“and”を続けて発音する時は、2語を続けて“Ladiesnd”というように発音をします。
‐“gentlemen”は、「ジェントルマン」というカタカナ表記の読み方をしないように気を付けてください。
◎“t”から“l”に発音する音は、「音法」という、発音に関わるルールのひとつ。
ひとつの音がもうひとつの音の影響を受けて変化をするというルールがあり、“t”から“l”の発音をする時は、“t”が舌の側面で発音されます。
舌の動きがどう変化しているのか?
普通“t”を発音する時は、舌が口の上側についた後、舌先を離して息を破裂させて発音します。また、普段“l”を発音する際は、舌先を上の歯ぐきに押し当て、舌の両側から息を出して発音します。ところが、“t”の次に来る音が“l”の場合、その“t”の舌先を歯ぐきから離さず舌の両横で発音します。
“t”から“l”の音に行く時、“t”の舌を口の上側から離し、また“l”の時に舌を上側につけるのは時間がかかってうので、舌先を離さず舌の両側で“t”を発音します。このような発音の例としては、Kettle、Battle、Bottleなどがあります。
‐文の最後の“gentlemen”は、声を上げても下げてもいいのですが、上げる場合と下げる場合でニュアンスが違います。上げると軽い感覚になり、下げると何かシリアスな響きになるのです。
●語尾を下げる場合
何か重大なことを乗客に伝えないといけない時は下げる。下げることによって聞いている側は、何か大切な重要なことが起こったと予想できます。
●語尾を上げる場合
上げるように言う時は、楽しく、明るいように聞こえます。このようなフライト前のアナウンスの場合は、明るく上げ調子に発音した方が良いでしょう。
●語尾を平坦にする場合
さほど感情を入れず機械的に言う場合は、平坦に発音します。
・“Welcome aboard Japan Airlines flight 770 to London.”
‐““Welcome aboard Japan Airlines”で少しポーズを置きます。Japan Airlinesの詳しい内容が、“flight 770 to London.”なので、“Airlines”と“flight”の間でポーズを置くと、後半の方がさらに詳しい情報を伝えていることになるのです。そのような意識で、文章の中でポーズを置く場所を考えながら発話しましょう。
・“We’re now ready for departure.”
‐“now”は伸ばし気味に発音します。
‐この文の中で一番大切な“ready”を強調するように、“re”にアクセントを置き、伸ばし気味に発音をします。ただたんに発音するのではなく、いよいよ出発するということを乗客に伝える意識で発音しましょう。
‐文の最後の言葉、“departure”は声を下げて発音します。言葉の終わりを下げることで、聞いている側に発話が終わることを伝えることができるからです。
・“Please make sure that your seat belt is securely fastened.”
‐長い文は、途中でポーズを置きましょう。
この文では、“Please make sure”で一度ポーズを置きます。そうすることで、聞き手が聞き取りやすくなります。(※ポーズを置くが、言葉の意味がそこで途切れるわけではないので注意)
‐ここでの“that”は弱く、速く発音されます。
‐“seat belt”は同じ強さ、声の高さで発音します。
‐“securely fastened.”は“securely”から徐々に声を下げていきます。そうすることで聞き手が、次の言葉で発話が終わることを予測しやすくなります。同じ速さで話し続けると、聞く側はすべて聴いた後に行動しないといけないので、できるだけ意味の流れと同じように、発話の流れを持ってくると聞き手が聞きやすくなります。
・“Our flight time to Heathrow Airport is expected to be 13 hour(s) and20 minutes.”
‐この文で強調したいのは、13時間20分かかるという意味の、“13hour(s) and 20 minutes.”なので、ここを一番強調するように発音しましょう。
‐“flight time”は、“flight”の方が強く発音され、“time”の方が弱く発音されます。
・“Your cabin attendants are looking forward to serving you.”
‐“cabin attendants”は、“ca”が強くて“bin”を弱く発音します。
‐“cabin attendants”と発音する際、“cabin”の“n”と、“attendants”の“a”を繋げて発音します。「キャビンアテンダント」とならないように気を付けましょう。
‐“serving you”の“se”は、日本語のアとエを合わせたような“æ”の発音をします。
“We hope you will enjoy your flight with us.”
‐“We hope”でポーズを置き、“you will enjoy your flight”でもう一度ポーズを置くことで、聞き取りやすくなります。
‐“your flight with us”この“your”から発話の終了を伝えるため、徐々に声を下げていきます。
‐“with us”は、“with”が強くて“us”が弱いので、“wi”を強調するように発音し、“thus”を弱く発音し、声を下げるように発音します。
巡航中のSEATBELT SIGN点灯時
<日本語>
皆様、ただいまシートベルト着用のサインが点灯いたしました。
シートベルトをしっかりとお締めください。
これからしばらくのあいだ、揺れることが予想されます。
機長の指示により、客室乗務員も着席いたします。
お客様ご自身でシートベルトをお確かめください。
なお、シートベルト着用のサインがついているあいだ、化粧室の使用はお控えください。
<英語>
We’re having some turbulence.
The seat belt sign is now on.
Please fasten your seat belt securely and refrain from using the restrooms while the sign is on.
The Captain has also instructed all cabin attendants to be seated at this time.
発音アドバイス
We are having some turbulence.
‐この文章の“some”は弱く発音します。コーヒーなどをすすめる時に言う、“(Do) you want some…”という時の“some”と同じく、「いくらかの」という物質名詞の時には“some”は強く発音されないので、注意しましょう。
‐“We are having some turbulence.”と、次の文章の“Theseat belt sign is now on.”は、“turbulence.”(乱気流)のため、因果関係になっています。なので、そのような意識を頭の中に入れて、発話しましょう。
※乱気流だからシートベルトのサインがついているんですよという因果関係を頭に置いて発音することと、そういうことを全く考えずに英語の文字だけを読むことでは、伝わり方が全然違います。
“Please fasten your seat belt securely and refrain from using the restrooms while the sign is on.”
‐“securely”は、最後の“l”まできちんと発音しましょう。
‐“refrain”は、“rain”の“r”の音に気を付けましょう。発音する時は舌を口の上側につけます。そして、最後の“n”の音も舌を口の上側につけたまま発音します。
‐“while the sign is on.”の、“sign is”は、“n”と“i”をつなげて“signis”と発音しましょう。このonは強めます。
・“The Captain has also instructed all cabin attendants to be seated at this time.”
‐キャプテンは私たちにこういう指示をしていますということを乗客に伝える言葉がこれなんだと意識しながら発音します。
到着前のご案内
<日本語>
この飛行機は、ただいまからおよそ20分でヒースロー空港に着陸する予定でございます。
ただいまの時刻は午前7時30分、天気は晴れ、気温は25度でございます。
着陸に備えまして、皆さまのお手荷物は、離陸の時と同じように上の棚など、しっかり固定される場所にお入れください。
また、まもなく、免税品の販売を終了いたします。
ご希望のお客様は、早めに乗務員にお知らせください。
まもなく前方のスクリーンで入国案内と、書類の記入方法をご説明いたします。
入国に必要な書類をお持ちでないお客様は、乗務員にお知らせください。
この飛行機は日本航空770便でございます。
<英語>
We will be landing at Heathrow Airport in about 20minutes.
The local time is 7:30 in the morning.
The latest weather information reports fair conditions in London, with a ground temperature of 25 degrees Celsius or 110 degrees Fahrenheit.
In preparation for landing, please stow all your baggage in the overhead compartments.
We will be closing our sales of duty-free items shortly.
If you wish to purchase any items, please contact your cabin attendant now.
We will soon be showing a short video on entry procedures.
A guide on how to fill out the entry forms will be shown in this program.
Please contact your cabin attendant if you have not received your entry forms.
This is Japan Airlines flight 770.
発音アドバイス
・“We will be landing at Heathrow Airport in about 20 minutes.”
‐“landing”を発音する時は、“lan”を伸ばし気味にならないように気を付けましょう。
‐“in about”は、別々に発音するのではなく、繋げるようにして“inabout”と発音します。
‐“20”は、“Twenty”と発音するか、あるいがアメリカ式に“Tweny”と発音します。
・“The local time is a 7:30 in the morning.”
‐“local”は二重母音なので、ローカルと伸ばすのではなくロウと軽くウを入れる。“cal”ではなく、“cul”というように発音します。
‐“7:30”は、“a half past seven”と発音します。
・“The latest weather information reports fair conditions in London,with a ground temperature of 25 degrees Celsius or 110 degrees Fahrenheit.”
‐温度の言い方が2通りあるので、それを間違えないようにしましょう。
1) “Celsius”は、初めの“Cel”を強調して発音します。
2) “Fahrenheit”の“a”は、発音記号では[æ]。“Cat”、“Bat”、“Bad”も同じ発音です。
・“In preparation for landing, Please stow all your baggage in the over head compartments.”
‐意味の上ではポーズを置かない方がいいのですが、“Please stow all your baggage”でひと呼吸入れた方が聞き取りやすいので、ここでポーズを置きます。
・“We will be closing our sales of duty-free items shortly.”
‐“We will be closing our sales of”までは乗客は何のことを言おうとしているのか分からないのですが、“duty-free”が出て来てようやく免税品の販売のことを言っていることが分かります。なので、この中で大切な言葉は“duty-free items”です。そこを意識しながら発音しましょう。
‐“shortly”の“tl”の発音に気を付けましょう。上記でも述べたように、舌を口の上側につけたまま発音します。
・“If you wish to purchase any items, please contact your cabinattendant now.”
‐従属節が文の初めに来ている典型的な文章なので、“items,”で声が上がります。
‐“Please contact your cabin attendant now.”は、階段を降りるように徐々に声が下がっていくように発音します。Cabinの最後のnとattendantの最初のaは続けて-natten-のようになる。
・“We will soon be showing a short video on entry procedures.”
‐全てつなげて発話するのは聞き取りにくいので、“We will soon be showing”で一度切ります。
・“A guide on how to fill out the entry forms will be shown in this program.”
‐“A guide on how to fill out the entry forms”までがこの文の主語なので、速いスピードで発話しないと追いつかないので、主語で一度切ります。
・“Please contact your cabin attendant if you have not received your entry forms.”
‐気持ちの中で乗客に向かって、「お持ちでなければ私共にお申し付けください。大丈夫ですか?」という気持ちで発音しましょう。
‐“cabin attendant”の次に“if”が来るので、“cabin attendant”は声を下げないで、さらにことばが続くことを伝えるようにして発音します。
アナウンスをする際のアドバイス
アナウンスの文章をまず、自分できちんと読み解き、理解しましょう。英文の意味をよく考え、このセリフは飛行機の中のどういう人に、どういう意味で言っているのか、自分で自分を納得させてから発音、発話すると伝わりやすくなります。
機械的に話しているだけでは、聞いている側の耳は通過しても、頭の中には入っていきません。
自分の体全体を使って、誰にどういうふうに伝えるのか、そこまでの配慮ができるようになることが一番大切です。そこを意識しながら、英文のアナウンスを発音してみましょう。
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