コロナ禍の中、エアライン業界の採用が中止となり、ショックを受けた方もいらっしゃると思います。しかし、これまでもバブル崩壊やリーマン・ショックなどの影響で採用が中止になったこともありましたが、再び採用が開始されました。今回も必ず採用が再開される時が来ます。それまで何をするべきか、今できることは何なのか、その点も踏まえて、元CAで現在アイザックエアラインスクールで講師をされている先生方へインタビューをしてきました。今回は、ANAに勤務されていた児玉美由紀先生に、当時の経験談やCAになるための準備で必要なこと、これからCAを目指す方々へのアドバイスなどを伺ってきました。
ANAの国際線専属CAとして世界中を飛び回って来られた児玉先生
ハワイのカレッジへの留学をご経験された児玉先生。様々なバックグラウンドを持つ人たちと触れ合っていく内に自身の考えが多角的になり、価値観が大きく変化したことがきっかけで、CAを目指そうと思われたそうです。
ホームステイ先のホノルルでは、アメリカ人家庭、ハワイアン家庭、フィリピン人家庭の3つのファミリーと共に暮らす経験をしたり、在学中、複数回に亘りニューヨークでの研修に挑戦をされたりしました。ニューヨークでは、ベトナム系アメリカ人のコミュニティへ出向き、アメリカ移住に至るまでの経緯を英語でインタビューするなど、異文化交流を深めていかれました。留学を通して学んだ英語や経験を活かし、世界中を飛び回り、国籍や年齢、旅の目的も異なるお客様へ快適な空の旅を提供するCAになりたいと強く思ったそうです。
CAになるための就職活動を始めた年が、ANAが国際線定期便就航をして4年目の年で、急ピッチで国際線を開設している時期でした。会社説明会で人事部の方からの話を聞いた際、今後どんどん国際的な舞台に乗り出していくという勢いが伝わってきてANAへの魅力を感じたといいます。また、チャレンジ精神が旺盛な企業風土にも惹かれ、チームANAの一員として仕事をしたいと思い、入社をされました。
入社後は、国際線客室乗務員を務め、ワシントンDC線のファーストクラスでは国際会議における大臣フライト乗務も担当されました。現在は、JTBグループ接遇マナー研修講師、大学ではキャリアデザイン講座などの講師を務めておられ、アイザックや企業での講師歴は22年以上というベテランの講師として、次世代のCA育成にご尽力されています。
ポイント1 常に変化するお客様の声に対応し、お客様の心に残るサービスを心掛ける
―児玉先生は、主にどのような路線に乗務されていましたか?
成田空港ベースで、国際線専属のCAとして乗務をしていました。(現在ANAでは、国際線専属CAというポジションはなく、国際線と国内線の両方に乗務するようになっています)
ワシントンDC、ニューヨーク、ロサンゼルス、パリ、ロンドン、フランクフルト、シドニー、バンコク、シンガポール、北京、ソウルなど、就航している全ての国際線のネットワークに乗務しておりました。
―世界中を飛び回っていらっしゃったのですね。乗務をしていてやりがいを感じたことや、乗務中の印象深い思い出などありましたか?
ANAではお客様から直接お寄せ頂くご意見を活かし、「クローズド・ループ」と称した改善活動を行っています。私も乗務中にお客様から機内食や機内免税品の商品、映画等のエンターテイメントプログラムについて様々なご意見を頂き、お客様の期待や要望に柔軟に応え、新たなサービス開発に繋げていけるよう努めておりました。私自身のレポートが反映され、「和食の味付け」や「機内食の器の素材」について改良ができたことを次のフライトで確認し、常に変化するお客様の声に対応できたことにやりがいを感じました。
印象深い思い出としましては、成田発ロンドン行の便に乗務した時のエピソードをご紹介します。お客様の中に、お一人旅のご高齢の方がいらっしゃったのですが、元気がないご様子だったのでお声がけをしました。すると、「現地でイギリス人家庭にホームステイをするプログラムに申し込んでいるのですが、英語があまり話せないのでホストファミリーとの英会話が不安です」と、大変緊張されていました。ロンドンでのホームステイを楽しんでいただきたいという想いから、ホームステイ先で良く使われる英会話に、日本語訳を付けたフレーズをノートに書き、到着前にプレゼント致しました。お客様にお渡しすると、「このノートがあれば安心です。ありがとう」と、とても喜ばれて笑顔になってくださり、私も心から嬉しく思いました。フライトを単に移動手段にするのではなく、客室乗務員と言葉を交わすことで、旅の思い出の一部になるような、お客様の心に残るサービスを目標にしていました。
ポイント2 フライトだけでなく、活躍の場が大きく開かれているANAのキャリアプラン
―ANAのキャリアプランについて教えてください。
ANAでは、入社1年目から、国内線・国際線の両方に乗務することができます。その後、フライト経験を積み、クルーをまとめクラス内のマネジメントを行うパーサー、国際線ビジネスクラス、客室全体のまとめ役であるチーフパーサー、ファーストクラスのCAとしてステップアップすることができます。
活躍の場はフライト以外にもあり、機内食や機内販売商品などの新規商品開発・機内品質の分析・採用など様々な部門に配属され、スタッフアドバイザーとして地上勤務の業務に就いたり、新入社員の専門訓練や、安全教育、海外ベースCAの指導を担当するインストラクターに挑戦したりすることも可能です。
ポイント3 パイオニア精神、チームスピリット、冷静な判断力を持ち、最高のおもてなしができる人材が求められる
―ANAのCAとして求められる人物像について教えてください。
ANAは、民間飛行機が日本の空を飛ぶことが許可された直後に2機のヘリコプターから始まった企業なので、ゼロから道を切り開いて挑戦するパイオニア精神のある人を求めています。
また、常にお客様の視点に立って最高の価値を生み出し、ANAならではの行き届いたおもてなしをする「ジャパンクオリティ」をお届けできる人、共に働く仲間と部門を越えてチームスピリットを発揮できる素養がある人が望まれます。
フライト中は、機材のトラブルや 悪天候のため、着陸空港を急遽変更するなどイレギュラーが発生したり、急病のお客様への応急処置を担ったりするなど、様々な事が起こり得ます。どのような状況下においてもお客様に安心感を与え、冷静に状況を把握する能力と判断力が求められます。
ポイント4 英語力、体力、忍耐力を身に着け、常に背筋を伸ばし傾聴の姿勢を持ち、企業研究を怠らず、丁寧に自己PRを作成する
―CAになるための準備で必要なことは何ですか?
大きく分けて、6つあります。1つずつご説明しますね。
1つめは「英語力」です。各航空会社によって若干の違いがありますが、おおよそ国内の航空会社は600点以上、外資系航空会社は700点~800点以上を目安にTOEIC®のスコアを取得しておく必要があります。
2つめは「体力作り」。13時間以上かかるヨーロッパや、アメリカ東海岸へのフライトでは非常に体力が求められます。フライト中、日本時間でずっと起きていたとしても、現地に着いたら仮眠をとり、その国の時間で起きて活動し、夜には寝るといった行動が必要になります。
また、国内線であっても1日4本乗務することは頻繁にあるため、華やかに見えるかもしれませんが、実は体力勝負の仕事なのです。「CA受験をする」と決めたら、今日からジョギングをするなど、自分自身で時間を作って体力作りを始めましょう。
3つめは、部活動、留学、ボランティア、アルバイトなど「興味を持ったことを極める」ことです。何事も夢中になって一生懸命取り組みを極めた人は、困難があっても乗り越えられる忍耐力が身についているはずです。そういう辛抱強さは、CAになった後も必ず役に立ちます。
そして4つめは、「日常の言葉遣いや立ち居振る舞い、聴く姿勢に気を付ける」ことです。食事
をする時、歩く時、座っている時も常に背筋を伸ばすことを意識すれば、凛とした印象になります。また、相手のお話を聴く時には傾聴の姿勢を持つことが大切です。聴くという文字は、「耳」、「目」、「心」という文字でできています。目を見て心を寄せて、相手の気持ちの入った言葉を受け入れて共感すると、相手も心を開き、親しみを持って下さいます。
5つめは、「企業研究を行う」ことです。まずは、航空会社のホームページをチェックしましょう。企業理念や沿革、社長のメッセージ、採用情報など企業研究で重要な情報がたくさん掲載されています。各航空会社の雰囲気が把握できるので、隅々まで読んでおきましょう。
また、積極的にインターンシップに参加することをお勧めします。アルバイトとは全く違った、社員の姿勢や仕事に対する責任感、会社の雰囲気など「航空会社で働くイメージ」を得ることができます。
6つめは、「自己PRの作成」です。エントリーシートに必要な内容なので、皆さん力を注いで作成されます。自己PR作成では、以下のステップでご自身のアピールポイントを考えると良いでしょう。
ステップ1:自分の特徴を前向きな表現で書き出す
ステップ2:書き出した特徴のうち、CAとして働く上で活かせそうなものを選ぶ
ステップ3:その特徴を裏付けるエピソードを整理し、根拠とする
ポイント5 前向きに思考を変え、可能性を信じて準備し、一歩踏み出すことが人生を大きく変えるきっかけとなる!
―これからエアライン業界を目指される方にメッセージやアドバイスをお願いします。
感染症の影響で採用活動の先行きの見えない中、エアライン業界を目指している皆様は不安を感じていることと思います。気持ちを切り替えるのは容易ではありませんが「今だから将来のために準備しておこう」と自分の思考を変えて行動することで、自ずと道は開けていきます。採用再開を待ちつつ、あらゆる可能性を信じて、考えつく限りの対策を自分が納得いくまで準備し取り組んで下さい。
夢も挑戦も目標も全てあなたの手の中にあり、一歩踏み出すことが人生を大きく変えるきっかけとなります。ANAが大切にしている「おもてなしマインド」を取り入れながら、皆様の目標への一歩を踏み出せるよう誠心誠意サポートいたします。
最後に
いかがでしたでしょうか? コロナ禍の不安定な時期ですが、必ずまた採用が再開される時が訪れます。今はもどかしい時だと思いますが、準備期間だと前向きに捉えて、更なるレベルアップを目指すのもいいかもしれません。アイザックエアラインスクールには、児玉先生のように元CAで、スキルと経歴のあるベテラン講師が多数在籍しております。ぜひ講師と一緒に合格までの準備、あるいは更なるレベルアップをしてみませんか? まずは無料体験レッスンをお試しいただけます。
講師氏名:児玉美由紀
出身航空会社:ANA
経歴:全日本空輸 国際線客室乗務員/JTBグループ 接遇マナー研修講師/ 大学にてキャリアデザイン講座/ ロジカルライティング講座 講師/ 厚生労働省指定キャリアコンサルタント能力評価試験合格/ CDA(キャリアデベロップメントアドバイザー)