コロナウイルスの感染拡大により、エアライン業界も大きな影響を受けました。大手航空会社のANAやJALも、2020年の新卒・既卒採用を中断。採用試験に臨もうとしていた矢先の事態に、ショックを受けられた方も少なくなかったことでしょう。しかし、エアライン業界は過去にもSARSやリーマンショックなどの影響で採用が中断されたことがありました。その過去を乗り越えてこられた先輩CAは数多くいらっしゃいます。危機を乗り越え、様々な工夫を凝らして、エアライン業界は更に飛躍をしてきました。過去の危機的状況の中、ANAのCAとして19年間現場で活躍された埼玉新越谷校の菊池理絵子講師へ、アフターコロナでの就活に必要なことは何か、インタビューをしてきました。
Q
現在エアライン業界は、コロナウイルスの影響により厳しい状況と言われていますが、ANAもSARS流行後の2003年、2004年は新卒採用がないことがありました。新卒採用がなかったことによる現場への影響はありましたか?
A
2002年に採用された新人CAにとっては、後輩が入ってこないため、2年たっても‘一番後輩’という感覚があったように思います。
採用が中断されるほど不景気に陥り、お客様が少ない時は小型機を使う方針になり、時にはフライト前に、急きょボーイング747から767の小型機に飛行機が変わることがあり、お客様にご迷惑をおかけすることもありました。
また、機ごとに資格が違い、訓練も違うため、移動中に機種の知識を洗い出したり、ダブルチェックをするなど、様々な工夫を実施しながらミスをしない努力をしていました。更に、後輩CAのフォローも必要なので、前向きな言葉をかけるようにしたり、お客様への質の良いサービスを行うためにもCA同士の連携を密にするよう心がけていました。マイナスの状況だからこそ得たものがあり、そこからプラスにもっていけたこともあります。フライトの中で、今できることをしっかりやっていくようにしていました。
Q
現在コロナウイルスによってエアライン業界にも様々な変化が起きています。菊池講師の現役時代に、コロナウイルス同様SARSが流行した時があったとお聞きしています。流行前とどのような変化がありましたか?
A
SARS対策というマニュアルが追加され、感染対策が強化されたことは大きな変化のひとつでした。
一番大きな変化は、会社の経営に関して意識が高まったことでした。CAが積極的に関わるため、機内販売の売上一位を表彰したり、マイレージなどの工夫を会社が行っていました。
私はサービスの一環として、接客しながら自然に経営参画の意識を持つことを心がけていました。例えば、以前はお客様にキャンディをお渡しして会話を広げていたのですが、会話のツールとして路線図や時刻表をお渡しするようになりました。どこの路線はどの程度の価格で飛んでいるのかを話し、そこからマイレージの契約などに入っていくというように、会話の先に営業のチャンスを広げていくことを心がけていました。
そのため、路線図について更に詳しく調べたり、機内販売の商品に愛着を持てるようになったり、新幹線が通っている路線にいかに差別化をしていくかなど、これまでとは異なる所に目を配るようになりました。とにかくサービス精神を忘れずに、機内での業務以外にも意識を向けることを大切にしていました。
SARSや震災後は、状況が変わり会社一体となるために客室部は、いかにこの状況を打破するか考える必要が出てきました。
会社が必死に生き残りをかけて戦っていたので、客室も必死になってアイデアを出したり、マイレージなどの商品を上手に進めていったりしていました。現場がCAひとりひとりのチャレンジをどんどん取り入れてくれるので、個人の参画意識が高まり、チャレンジ精神をもって取り組むことができました。マイナスな状況におかれることで、画一的なサービスだけしていては、本当に良いサービスはできないことに気づかされ、会社のために、お客様のためにできることを創意工夫して実現していくようになりました。
Q
環境が変わるなか、大変なこともあったと思いますが、どのようなことを心がけていましたか?
A
フライト以外の日は、いかに自己啓発をしていくかが大事だと思い、様々なボランティア活動を行いました。地域の方とお祭りの準備をしたり、こどもたちに向けた航空教室を開いたり、社内の他部署の仕事を体験したり、病院に行って辛い状況の患者さんとお話をして、率直な意見を聞いたり、見聞を広げることができました。また、幅広い年代の方と接することができたので、機内でのお子様やご年配の方への対応に活かすことができました。
コロナ禍の現在もそうですが、世の中が暗い雰囲気になっていたので、ボランティア活動を通して知り合った方々や、お客様に少しでも元気になってもらいたい、楽しんでいただきたいと思いながら、明るく接するよう心がけていました。
Q
CAの中には、銀行、看護師、一般事務など、その他全くの異業種から転職してきた方もいらっしゃると思います。異業種から転職したCAの方々は、現場でどのように活躍されていましたか?
A
エアライン業界は入社してしまえば、新卒も既卒も関係ありません。新卒の方よりも既卒の方が良いサービスをするケースも当然あります。他業種で経験を積んできた自分のバックグラウンドを活かして良いサービスを提供する方もたくさん見てきました。
バックグラウンドをいかせるチャンスは様々あります。例えば、金融業界出身の人であれば、堅実な仕事をし、お金の計算が速いため、短いフライトに強いです。教員出身の人であれば、修学旅行生に強く、看護師出身の人であれば、病人が発生するケースがあるので対応することができます。転職されてきた皆さん、業種にかかわらず自分の特技をいかして仕事をしていました。
Q
菊池講師が現役時代サービスをする中で、大切にしていたこと、意識していたことを教えて下さい。
A
新卒の時にインストラクターから、「ファースト、ビジネス、エコノミーなどクラスがありますが、お一人お一人のお客様を大切にしてください」と言われました。自分のサービスの軸はそこにつきます。一便一便手を抜かずにフライトし、お客様一人一人を大切にしていくことを意識していました。
いつもはビジネスクラスにご搭乗されるお客様がエコノミークラスにいらっしゃいました。よくお見かけするお客様だったため、エコノミークラスでは基本的にネームコールはしないのですが「○○様、いつものようにシャンパンで乾杯しますか?」とお声がけしたところ、お礼のお手紙をいただきました。
また、ANAは経歴順に、何年たったらチーフというように年数でステップアップが決まるわけではありません。チャレンジ精神を買ってくれる会社なので、質の良いサービスやアイデアを出して、内容の濃い仕事をしていくことでステップアップしていけます。
サービスは変化するもので、変化は目まぐるしく起こっています。数ヶ月でも休むと知識を一新して、新たに臨まなければなりません。ベテランも一定期間休んだら訓練生として訓練を受けるので、50代の訓練生もいます。私も産休後は訓練生として訓練を受けました。現場で活かせるサービスを身につけ、自分自身でもお客様に寄り添うためにはどのようなサービスを心がけないといけないのか、意識しながら質の良いサービスを目指して努力し続けていました。
Q
現役時代の印象的なエピソードはありますか?
A
Q
CAの仕事の魅力は何ですか?
A
マニュアルでは対応できない事が発生する事がありますが、そんな中で自分で最大限できる事を考えて行動するやり甲斐があります。客室乗務員一人一人の強味を存分に活かせる職場だと感じます。考えて行動した結果、お客様に喜んでいただける事が最大のやり甲斐だと感じます。
Q
募集が殆どなくなった今も、エアライン業界の就活のために努力をしている新卒、既卒の皆さんへメッセージをお願いします。
A
マイナスの状況だからこそ自分にできることを視野を広く考え、採用にそなえて準備していくことが大切です。
募集がない時こそ視野を広げるチャンスなので、全てのことはサービスに繋がるという思いを持って、マインドを磨いて次の募集に備えてほしいと思います。
本を読んだり、ボランティア活動に参加したり、資格を取得をするなどして、見えないところでの努力をすることが大切だと思います。
いかがでしたでしょうか?
SARSの中、CAとして活躍された菊池講師の生の体験談は、CAの夢を諦めない皆さんの希望になったのではないでしょうか。既卒入社だとしても、他業種で培った経験とスキルを活かし、現場で活躍することはできます。また必ず採用は再開します。その日まで心身を磨き、CAになる夢を諦めず、希望をもって前進してください。アイザックは皆さんの夢を応援しています。
※ ご入力内容の盗聴を防止するため、SSL(暗号化通信)を採用しております。