エミレーツ航空で約10年の長期に渡り客室乗務員として活躍されていた坂本先生に、エミレーツ航空の社内の雰囲気や働いてみて感じたことなどを詳しくお伺いしました。大人気の中東系航空会社の実際の生活とは?受験予定の方はぜひチェックしてみてください。
―ここからはドバイの生活についてお伺いします。ドバイでは会社支給の全寮制というお話とのことですが、寮生活はいかがでしたか?
ドバイでは会社の寮が用意されます。寮というより、マンションと言った方がしっくりくるイメージです。部屋はとても広く、家賃、光熱費ともに会社から支給されます。また会社までの送迎バスもあります。
マンションは、場所や築年数などさまざまで、たくさんあります。2人部屋と3人部屋があり、入社時は部屋もシェアする相手もランダムに割り当てられます。
ただ、シェアといっても、バスルームやトイレはそれぞれのベッドルームの中にあるタイプが多かったので、プライベートな空間は快適に確保できます。
ちなみに1人部屋がもらえるのは、ファーストクラス担当になったタイミングとなります。
私の入社当初は、古めの一部屋が割り当てられたうえに、シェア相手となった方とライフスタイルが合わないこともあり(苦笑)、他の部屋の空きを自力で探して引っ越しました。住居についても、それぞれの自由に任されているので、条件が合えば部屋を変わることは可能です。何を重視するかは人によって異なりますが、中には80階ほどの高層マンションもあり、同じ会社支給でも、利便性やマンションのタイプは幅広かったです。
―ドバイでオフの日は何をしていましたか。
ドバイの夏は本当に熱いので、外を歩くことはできず、よくタクシーで近くのショッピングモールに買い物や食事に行っていましたね。タクシーは安く、もっとも日常的な移動手段でした。
日本の東京は眠らない街と言われますが、ドバイも同じような感じで、夜中の2時、3時でも街はすごく明るく、ショッピングモールも23時ぐらいまで営業しています。皆さん中東と聞くと心配されるかもしれませんが、24時間体制のセキュリティーが整っているところが多く、ドバイの治安は世界的にみても、かなり良いと思います。
―逆にステイ先での勤務時間外ではどんなことをしていましたか?
10年近く働いても、やはりステイ先ではとにかく常に出かけたくて、近くを散歩するなど観光していました。疲れていてなかなか遠くの有名観光地へ行けないようなときも、いろいろな都市の地元のスーパーマーケットへ行くのが楽しみでした。近くのスーパーを探して、この都市ではこれがおいしい!という商品を発見するのが大好きでした。
―数えきれない都市を回ったとのことですが、ステイ先で印象に残っている場所はありますか。
印象に残っているのはスウェーデンのストックホルムです。人気のステイ先なので頻繁に入る路線ではないのですが、たまたま2年続けて同じ時期にフライトをしました。そのステイ時がちょうどノーベル賞の授賞週間と被っていて、2年とも日本人の方が受賞された年だったので、その空気を現地で直に感じられたのがよかったです。
あとはブラジルも印象に残っています。遠いですし、私にとっては、なかなかプライベートで計画して行くような場所ではなかったので、リオデジャネイロやサンパウロにステイとして行けて、とても貴重な経験ができました。そのとき一緒に乗務していたブラジル出身のクルーが、街中を案内してくれたので観光も食事も存分に満喫できました。
エミレーツ航空は、それぞれの便にその土地出身のクルーが1人は乗務している可能性が高いので、地元を知るクルー仲間に街を案内してもらえ、ステイ先を楽しめるのもよかったですね。
―エミレーツは毎年航空業界の名だたる賞を受賞していますが、エミレーツが特に強いサービスは?
A380のファーストクラスに設置されているシャワーは有名だと思います。
また豊富な機内エンターテイメントも人気があります。500を超えるチャンネルがあり、邦画だけでも常時20タイトルぐらい視聴できます。またゲームなども充実していて、お子様にも楽しんでいただけています。
Wi-fiについてもかなり早い時期から導入しており、お値段も他社に比べると安く提供していると思います。また充電用のコンセントも各クラス、各座席についている、など他社と比べると、機内設備はかなり充実している、と言われることが多かったです。
― エミレーツ航空の乗務でやりがいを感じたことは何でしたか?
エミレーツ航空のファーストクラスではオンデマンド(お客様のご要望に応じた)のサービスを提供しています。すべてのメニューの中から、お客様が欲しいときに欲しいものをお出しするスタイルです。
あるお客様が朝ごはんのメニューを召し上がっているときに、お隣のお客様はディナーのメニューを召し上がっている、というようなこともあります。
また、すべてのお食事を私たちが盛りつけていましたので、美しい盛りつけの工夫を凝らすのも楽しく、例えばサラダひとつにしても、何種類もの野菜やトッピングの中からお好みのものをおうかがいし、そのお客様に合わせた一皿をお出ししていました。
おひとりおひとりのニーズやお好みに合わせて細やかに、柔軟に対応することができ、お客様に寄り添ったサービスができるところはやりがいがありました。
近隣中東諸国への最短のフライトは、およそ40分(東京~大阪間と同じくらいのフライト時間)なのですが、このような短距離でもファーストクラスであればホットミール、エコノミークラスでもトレイに載せた軽食を提供するので、その限られた時間で最大限のサービスを提供することにもやりがいを感じていました。
その他にも中東ならではの文化があり、例えばラマダン中(イスラム教の断食月)は、イスラム教徒のお客様は日没から日の出の時間帯しかお食事を召し上がることができません。ですので、日中のフライトでお客様が機内食を召し上がれないときは、ラマダン明け(日没後)に食べられるようなバナナやヨーグルトの入ったお持ち帰り用のお弁当ボックスをお配りする、というサービスがありました。そのあたりも文化の違いを感じながら楽しく乗務しておりました。
―エミレーツ航空の客室乗務員を志している方は多いと思うのですが、どんなタイプの方がエミレーツ航空に向いていると思いますか。
様々な国の人と乗務することになるので、お互いの文化を尊重しその違いを楽しめることが何より必要だと思います。
また、これはもちろん人にもよりますが、日本人は一般的に他の国の方と比べると自己主張が弱いと思われがちです。けれども、多国籍の中で対等に働くには、自分の主張をしっかり持っておく必要があります。そうしないと職場での同僚とのバランスがうまく保てなくなるからです。日本人は働き者で優しいから、仕事を余分に任せてしまおうというふうに思われてしまうこともよくあります。そのようなときに業務負担が偏らないよう、きちんと線引きをして自分の権利ははっきり伝えられるような、自己主張のできる方であるといいと思います。ただ、私も最初からそうできたわけではなく、入社当初は「自己主張が足りない!」と注意され続けながら、徐々に揉まれて強くなることができました(笑)
そして、自身の「日本人らしさ」を大切にできることも重要です。エミレーツ航空の日本人客室乗務員は、日本人として、細やかな気遣いやおもてなしの心を持ったサービスを提供できる人ということを期待され雇用されています。「自己主張」と「日本人らしさ」のバランスは状況によっては難しいところですが、そこがエミレーツならではのやりがいや魅力につながるはずです。
フライトごとに、行先も、一緒に乗務するクルーも変わりますので、柔軟性を持って、その状況を臨機応変に楽しめる方には、とても働きやすい素晴らしい環境だと自信を持っておすすめします。
前後編にわたってお送りした、坂本先生へのインタビューはいかがでしたでしょうか。あなたも世界各地を飛び回れるエミレーツ航空にチャレンジしてみませんか。坂本先生をはじめとする外資系講師陣がしっかりとみなさんの夢を応援致します。