日本航空客室乗務員の面接を受けて内定を頂き、10年勤めた期間で採用のお手伝いもさせて頂きました。その経験から、JALの採用面接で失敗しないため言葉遣いの重要性についてお伝えいたします。
「日本航空の欠点は?」というような質問を受けて答えに窮するケースがよくあります。
この際、「はい!例えば~」などと
立て板に水のごとく欠点をすらすらと話し始めるのではなく、
「欠点などと申し上げる立場ではございませんが、
○○な御社ですので、△△のようなサービスがあるとより良くなると思います」とお答えすると、角は立ちません。
先日、言葉遣いは心遣い、だと言われる所以を体感しました。待ち合わせ場所に到着した際、
「やっぱり今日、風強かったんだ」と驚きながら、元シンガポール航空CAの先輩が私の頭に視線を送りました。
その視線のお陰で「あっ!ヘアスタイルが崩れているんだ」と気付く事ができ、
「直してきます(^^)!」とお手洗いへ駆け込むことが出来ました。
髪を直しながら、
「相手に恥をかかせず、場の空気も考慮したスマートな心遣いだったな」と尊敬してしまいました。
一連のやりとりを見ていた人達も、スマートな気の遣い方をなさる先輩に信頼が増したのではないかと思います。
面接官も、真っ向から自社を否定されたくて質問しているわけではありません。
どのような言葉を選びながら話をする人か、どんな時でも相手への心配りが出来る人かチェックしているのです。
言葉の選び方は、一朝一夕に上手になるわけではありません。
それでも家族や友人との何気ない会話や、アルバイト先でのお客さまとの会話、メールを送る際などに、少し配慮を加えてみましょう。
ぐっと素敵な言葉遣い=心遣いが出来る人になります。
大切なことは、自分本位で言葉を発さないこと。同じ行動に導くにしても
「どのような言葉をかけられると心地よいかな」
「なんて言われたら理解しやすいかな」と相手の立場に立つことです。
客室乗務員は、美しい日本語を使用するのは勿論のこと、お客さまのお立場を考慮した言葉遣いを徹底しています。
「お客さまのお立場を考慮した言葉遣い」とは一体どのようなものでしょう。
ここで1つ、クイズです。
飛行機が離陸する際、電波を発する電子機器の電源をお切りいただかなければならない時間があります。
お客さまに携帯電話の電源をお切りいただく際、あなたが客室乗務員だったらどのように依頼しますか?
客室乗務員の仕事に少し興味がある方は、サービス要員と保安要員という言葉をもうご存知かもしれませんね。
保安要員とは、機内火災や緊急着陸等に際して、お客さまの命をお守りする仕事に従事するという意味があり、
サービス要員は、お客さまが快適に機内で空の旅をお過ごしいただくための心遣いを行う仕事に従事する要員です。
客室乗務員はサービス要員であり保安要員であるという点は、他の接客業と大きく異なる点ですね。
また、保安要員でありサービス要員である、わけですので、よっぽどの緊急事態以外は、お客さまに不快感を与えずに安全を維持する心遣いが必要となります。
実は「携帯電話スイッチオフの依頼方法」は、お客さまからクレームをいただく事が多い事例です。
「このあと電源を切るつもりでいたのに、注意されて恥をかかされた」
「真顔で携帯電話の電源を切るよう命令された」と、お客さまに不快感を与えないため、
先輩客室乗務員はお客様に対応している最中も、新人乗務員の対応にもアンテナを張っています。
「あなたは警察官ではないのですよ」と、先輩がアドバイスしている場面に出くわした事もありました。
前述したように客室乗務員はサービス要員でもあります。お客さまに恥をかかせることなく、快く電源をお切りいただくために細心の配慮を払う必要があるのです。
工夫が必要ですが、大変やりがいのある部分です。
私が機内で行っていた、電源オフのご依頼方法というと、、、
そろそろ電源を切っていただかなければならないタイミングが近づくと、
まず、
(1) その他大勢のお客さまに対して「お待たせいたしました(感謝、ねぎらいの気持ちを込めて)間もなくドアがしまります。安全運航のため、携帯電話等電波を発する電子機器の電源をお切りください」とお伝えして歩く
それでも使用し続けていらっしゃるお客さまに対しては
(2) 「本日も日本航空をご利用くださり誠にありがとうございます(一度はJALをご利用いただいているお客さまが多いので、再度ご利用くださっている大切なお客さまだという意味合いを込めて「も」と使う)
(3) 本日、この付近にお座りのお客さまを担当させていただく、有田と申します(携帯電話の電源をお切りいただくために声をおかけしたわけではなく、丁寧な登場御礼をするために声をおかけしたと感じていただきたいので)
(4) 只今(実は少し前なのだが)飛行機のドアが閉まりました(「そうなの?気付かなかったよ」と言い訳しやすいように話を進めることが多い)
(5) ご多忙中のところ、大変申し訳ございませんが(まず、こちらの都合に合わせていただくためにご不便をおかけしてしまうことを謝罪する)
(6) 安全運航の為(あくまでも、「お客さまのため」だということを御理解いただく)
(7) 携帯電話の電源をお切りいただけますでしょうか?(命令でなく、依頼形で頼みごとをするのは鉄則!相手が快く了承しやすい)
ここで、さすがに電源はお切りいただけます。
その後、
(8) ご協力、誠にありがとうございます(すかさず、感謝の意を述べる)
(9) 本日のフライトタイムは11時間、偏西風の影響を受けまして定刻より少し早くシカゴに到着できる見込みでございます。(「注意される為だけに声をかけられた」と感じるのは誰だって不快なもの。搭乗御礼をしようと思ったら、お客さまが携帯電話をまだご使用なさっている現場に出くわした、というような雰囲気を醸し出す)
(10) 「フライト中、何かご希望がございましたら、何なりとお申し付けください」という言葉を添えて、登場御礼の締めくくりとする
いかがでしょうか。
このようにして、常に感謝の気持ちをお伝えしながら、頼みづらい事もさりげなくお願いし、笑顔でご了承いただくのが客室乗務員の仕事です。
客室乗務員の仕事の良さの1つに仕事で鍛錬したスキルが私生活にダイレクトに活かせるという点があります。
乗務中、相手に配慮した言葉を遣うようにしていると私生活で一番大切にしたい人達に対しても、心配りある話し方ができるようになります。とっても素敵なことですよね。
これを読まれた今から言葉遣い=心遣いという意識で日々の言葉遣いを意識しましょう。
有田りな
慶應義塾大学卒業。新卒で日本航空株式会社に入社。客室乗務員として10年勤め、在職中は大学での講演、雑誌やテレビの取材に多数出演し、就職情報雑誌月刊エアステージではJALの特集号で表紙も飾る。 現在アイザック エアラインスクール講師。社団法人日本マナーOJTインストラクター協会マナーOJTインストラクター、接客英会話インストラクター。
“客室乗務員は「自分を磨き、相手を幸せにする」仕事で、目指そうと決めた日から心磨きが始まっています。大学3年生の秋からアイザックに通い、先生方のご指導や励まし合える仲間のおかげで夢を叶えたアイザック卒業生講師です。皆様の期待や不安も共有しながら「夢を叶えるための時間も楽しい!」と感じていただける授業を目指しています。”
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